2010年11月。β世界線。これは岡部倫太郎が、7月28日に牧瀬紅莉栖を救えないまま戻ってきた後の物語。
倫太郎は紅莉栖への想いもタイムマシンへの情熱も封じこめ、ラボへもほとんど足を運ばず、ごく普通の大学生活を送るようになっていた。
そんなある時、大学のセミナーで一人の女性と出会う。その女性の名前は比屋定真帆(ひやじょうまほ)。紅莉栖と同じヴィクトル・コンドリア大学脳科学研究所の研究員で、セミナーにて講演を行うレスキネン教授の助手として来日したのだった。
そのレスキネン教授が研究している『Amadeus』と呼ばれるシステムが、やがて自身を再び陰謀のはびこる世界へと導くことになるとは、このとき岡部はまだ知らなかった。
そう、そこに『彼女』は今もいる———