第2話
まゆり「んーと、オカリンは今年のお誕生日、どんな風にお祝いされたい~?」
倫太郎「フッ、どう祝われたいか、か……。ならばまずは、この鳳凰院凶真の誕生日を祝うことがいかに危険かということから説明せねばなるまい」
紅莉栖「めんどくさいわね」
至 「いつものことじゃね」
倫太郎「いいか、よく聞け。誕生日という情報は真名にも匹敵する、個人を示す重要な情報だ。それがあれば鳳凰院凶真という人間に秘められたあらゆる真実が丸裸になると言っても過言ではない。故に機関は、俺の誕生日がいつなのかを知りたがっているわけだ」
紅莉栖「なにその陰謀論。あんたを気にしている人間なんて世界には皆無よ、皆無」
至 「そ、そこまでばっさり切り捨てるとか……牧瀬氏、ドSすぐるだろ」
倫太郎「故に! 俺の誕生日を知る人物もまた、機関の標的となってしまうのだ! 今後、機関はお前たちにも刺客を差し向けるだろう。それについては事前に警告できなかった俺の過ちだ。本当に済まないと思っている」
まゆり「んーと?」
倫太郎「そしてどうか頼む。もしどうしても俺の誕生日を祝いたいのならば、当日までそれを誰にも知られないようにしろ。何事もないかのようにその日まで過ごせ。それならば、かろうじて機関の目を欺くことができるはず。それが、それこそが、狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真の誕生日を祝うために、なによりも大事なことなのだ」
まゆり「そうなんだぁ……?」
至 「つまりどういうことだってばよ。牧瀬氏は理解できた?」
紅莉栖「途中から聞き流してたわ」
倫太郎「そこ! 助手の分際でなぜちゃんと聞いていないのだ!」
紅莉栖「誰が助手よ!」
倫太郎「お前だ、クリスティーナ」
紅莉栖「助手でもクリスティーナでもないと言っとろうが!」
まゆり「ねえねえオカリン。あのね、まゆしぃも、オカリンの説明がよく分からなかったんだけど……」
倫太郎「同じ説明は二度とできない。機関のエージェントが、いつどこで聞いているか分からないからな」
まゆり「ええ~、じゃあ、まゆしぃはどうすれば……」
倫太郎「…………」
まゆり「オカリンの希望が分からないままじゃ、お誕生日会、中止になっちゃうよぅ……」
倫太郎「……もしもし、俺だ。……ん、なんだと!? 機関に一矢報いる策を考えただと!? それは俺にとってはまさに、サ、サプライズ、だな!」
紅莉栖「今、ちょっと照れたわね」
至 「うん。照れた。明らかに」
倫太郎「……ああ、分かっているさ、奇襲、すなわちサプライズ! これこそが世界に混沌をもたらす、最善の策だとな。サプライズ! 健闘を祈る。サプライズだ! それが運命石の扉の選択だ。エル・プサイ・コンサプライズ!」
紅莉栖「…………」
至 「…………」
倫太郎「……話は以上だ」
紅莉栖「わざとらしいにもほどがあるだろ」
まゆり「ん~、まゆしぃには、難しすぎてやっぱりよく分からなかったよ~」
倫太郎「えっ?」